爽やかな秋の風が心地よく感じられる今日この頃、皆さんはいかがお過ごしでしょうか?季節の変わり目ですので体調には気をつけて元気に過ごしていきたいものですね。
今回は高齢者が陥りやすい「低栄養」について述べていきたいと思います。
『見た目では分かりにくい低栄養に注意』
高齢者の栄養状態において1番の問題は「低栄養状態」に陥ることです。
低栄養とは体が必要とする栄養量が摂れていない状態(栄養障害)をいいます。低栄養には、病気に関連した低栄養と栄養摂取不足で引き起こされる低栄養があり、前者では基礎疾患のコントロールと低栄養の立て直しを、後者なら栄養摂取量を増やすことが必要です。
ただし、低栄養は見た目にはわからないことが多く、痩せ以外はほとんど症状がありません。最も重要なのは体重の変化ですが、体重が減っていなくても低栄養と診断される方もいます。多くの病気が1つのマーカーや1つの所見で診断できるのとは違い、多面的評価で総合的に診断するというのが低栄養の味方の基本です。
『低栄養になる原因』
低栄養になる要因には、先述した食欲不振以外にも、義歯や咀嚼力低下などの口腔状態、嚥下障害、認知機能の低下など様々なことが関係しています。
一部には消化・吸収能力の変化もその一因に挙げられることがありますが、消化・吸収に関しては加齢の影響を受けないというのが定説です。
また、日常的に食事ができている人は栄養障害を引き起こすほどビタミンやミネラルが欠乏することはないので、そうした栄養素の摂取不足を気にしすぎる必要はないでしょう。
『栄養状態の評価指標』
栄養状態の評価にはMNA®︎-SA(65歳以上の高齢者向き)やMUST(成人全般に有用)などのツールが用いられます。体重については、MNA®︎-SAでは過去3ヶ月、MUSTでは過去6ヶ月の変化を聴取します。
この2つはとても臨床的なツールで、米国・欧州・アジア・南米の4つの国際栄養関連学会が集まって作成した世界基準の低栄養診断(GLIM基準)でも第一段階のスクリーニングとして使用されます。
なお、よく診断の目安とされている血液検査のアルブミン値は、炎症によって引き起こされる低栄養以外は関連性がありません。誤解が多いため米国静脈経腸栄養学会が繰り返し論文を発表していますが、アルブミン値は低栄養の絶対的マーカーではないことは覚えておきましょう。
さて、次回は「低栄養」になるとどんな影響があるのか?について述べていきたいと思います。