秋も深まり、すっかり日足が短くなりましたね。昼との寒暖差が大きく、体調には気をつけたい季節ですが、皆様お変わりないでしょうか?
今回も引き続き高齢者が陥りやすい「低栄養」について述べていきます。
さて、低栄養になるとどんな影響があるのでしょうか?
『そもそも低栄養はなぜいけないのでしょうか?』
低栄養は寿命が縮まっているサインです。少なくとも低栄養と診断された時点で多くの代謝機能に異常をきたし、低栄養でない人たちと比べて明らかに生命予後が短くなります。これには低栄養を呈した人たちが元々持っている基礎疾患が関係していることも考えられます。
『低栄養は病気のリスクを高めるのか?』
低栄養によって心血管系疾患や認知症のリスクが高くなると言われていますが、現在のところ、そうしたエビデンス(科学的根拠)はありません。心血管系疾患でいえばLDLコレステロールや代謝物のマーカーなどの数値の異常を関連付けて低栄養といっている可能性があります。また、認知症に関しても因果関係が逆で、多くは認知機能が低下することで食事がうまく取れずに低栄養になります。おそらくは栄養という曖昧な言葉の使い方が混乱を招いているのでしょう。一方で、低栄養によって高まるのが感染症のリスクです。
フレイルやサルコペニアになりやすくなることもよく知られています。低栄養と病気のリスクについては原因と結果の順番を整理し直すことが必要なようです。
『フレイル』と『サルコペニア』について・・・
フレイルとは、身体が加齢によって衰えて虚弱になっている状態を指します。健常な状態から要介護に至るまでの中間という概念で、関わり方によっては元の健常な状態に戻るため、治療的な介入効果が期待できます。
一方のサルコペニアは、老化による筋肉量の減少をいいます。フレイルが概念なのに対して、サルコペニアは臓器別の疾患でいうところの筋肉の病気であり、サルコペニアが進行していくことでフレイル化します。つまり、フレイルの原因の一つがサルコペニアということ。サルコペニアの原因には加齢、低活動、栄養不足、さまざまな病気などがあります。
栄養面でみると、栄養不足はサルコペニアの原因のひとつ(低栄養が原因ではない)で、サルコペニアの人には低栄養が多い(結果として栄養不足になるのではない)という関係にあります。こうした絡み合った関係性から、フレイルやサルコペニアが高齢者の栄養の問題のキーワードとして注目されているのです。