寒さも本格的になってきた12月皆様いかがお過ごしでしょうか?
師走というだけあって何かと慌ただしい季節ですが、体調に気をつけて健康的に過ごしたいものですね。
さて、今回は老年栄養を理解するためのトピックスをご紹介します。
『食事のバランスは食べ方の工夫で考えよう』
食事は朝食・昼食をしっかり食べた方が1日の栄養摂取量が増えることが分かっています。朝食で栄養素を補充すると同じものを夜食べた時よりもエネルギー生産量が増え、食事によるエネルギー代謝(食事誘発性熱生産)も増大します。すると食欲も増し、全体の食事量が改善します。また、朝・昼・晩の栄養素の摂取バランスは3:3:4にするなど、極力似たようなバランスにすることが重要です。高齢者にとってのバランスの良い食事とは、栄養素のバランスよりも食事量のバランスが大事なのです。
『タンパク質は朝から摂ろう!』
朝食・昼食では特にタンパク質を積極的に取りましょう。朝食ならご飯と味噌汁に卵や牛乳などの乳製品、納豆などの豆料理をプラスするのがオススメです。
これは朝・昼・晩でタンパク質の摂取量をある程度一定にすることが目的。血中のアミノ酸濃度があまり変動しない方がタンパク合成能は高くなることが知られているからです。
この方法は栄養サポートの最初の一歩で、食事の強化(food fortification)というアプローチ法の一つ。日本ではあまり普及していませんが、海外では次の段階としてONS(経口栄養補助食品)による栄養摂取が栄養サポートのスタンダードとなっています。
『病気による食事制限も切り替えを』
病気によって食事制限をしている高齢者も栄養摂取量を落とさない食事に切り替えが必要な場合があります。
糖尿病や腎臓系の学会は年齢に応じて血糖コントロール目標や食事制限を緩和し、フレイルやサルコペニアの高齢者に関してはその限りではないと提言しています。これには、例えばサルコペニアが進行した状態の慢性腎臓病の人が型通りのタンパク質摂取制限をすることで、容易に要介護状態に近づくリスクを減らす意義があります。ただ、ここにも「すりこみ」による障壁が。一度すり込まれた食事指導はなかなか上書きしづらいという問題があるのです。
『地域在住高齢者のケアこそ歯科衛生士に』
比較的元気な地域在住高齢者に栄養不足の問題があるとすれば、それは口腔機能に原因がある可能性大です。口腔機能が低下していればフレイルやサルコペニアに対するタンパク質・エネルギー摂取に支障が出ます。特にタンパク質摂取で肉を食べる時には、咀嚼力が食べる量に直接影響します。咀嚼、口腔機能に特化した評価は歯科衛生士の領域であり、その役割は非常に重要です。ぜひフレイルやサルコペニアの知識を身につけ、口腔機能の向上の重要性をあらためて考えてみてください。
また、肉を柔らかくする調理法などを知っておくことも大切です。どのタンパク質を取るのが一番良いかといえば鶏肉なのですが、鶏肉は高齢者には噛みにくい食品です。食べやすい調理法を取り入れることも大事になってきます。